<簡単に言うと>
【休職中の生活費をどうしよう?→会社員や公務員は傷病手当金、自営業は自治体の低利子貸付の活用を】
 休職しなければならなくなっとき、「協会けんぽ」「組合けんぽ」、その他職業団体の国民健康保険などの被保険者、つまり会社員や公務員なら、休業中の生活保障として「傷病手当金」が支給される。3日以上連続して仕事を休んだ場合の4日目からが対象だ。
 受給できる金額は、標準報酬日額の3分の2。日給が6000円なら1日4000円となり、日数をかけた金額が月ごとに支給される。休業中に給与の支払いがあれば受給できないが、傷病手当金のほうが高額なら差額が支払われる。
 ただし自営業者などが加入する国民健康保険の場合、傷病手当金に相当するものはない。損害保険会社が扱っている所得補償保険に加入していても、うつ病は対象外だ。当座の生活費は、自治体などの無利子や低利子の貸付金を利用できる場合もあるが、長引いたときは障害基礎年金(リンク)や生活保護(リンク)の受給を検討する。
傷病手当金とは?
支給の条件 ■社会保険の被保険者
■病気やケガで3日以上継続して仕事を休んでいる(4日目から支給)
支給金額 ■休業1日につき、標準報酬日額の2/3。
(休業中に給与が支払われた場合は差額のみ支給)
支給期間 ■支給日から1年6ヵ月間





<詳細>
 なお、以下は全て、2012年12月時点の情報です。現在、傷病手当金の支給額を6割に引き下げる事や上限・下限額の設定、在職中であっても被保険者期間が一定期間以上でないと傷病手当金を受給出来なくなるような変更が検討されています。必ず、ご自身で最新の情報を確認して下さい。
 また、ここでは、原則、健康保険組合を基準に説明しています。共済組合などでは若干異なる場合があるのと、健康保険組合でも組合間によって差がありますのでお気をつけ下さい。

 傷病手当金は健康保険法で定められていますが、国民健康保険(国保)と国民健康保険組合(組合国保)は根拠となる法律が国民健康保険法であり、市町村運営の国保で傷病手当金支給しているところはありませんし、組合国保は組合により傷病手当金の支給額や支給期間がバラバラだし支給がないところもあります。
 共済組合の根拠法は、国家公務員共済組合法、地方公務員共済組合法、私立学校教職員共済組合法です。共済組合の場合も、標準報酬月額の上限額は短期給付(健康保険に相当)では121万円です。標準報酬月額の決定方法などは、健康保険法と同じですが、給付に関しては、各共済組合毎に異なります。一般的には、健康保険法に準じますが、各共済組合ごとに少しずつ給付に関しては異なります。例えば、標準報酬日額は、健康保険法では、標準報酬月額を30で割って求めますが、国家公務員共済組合法では、標準報酬月額を22で割って求めます。支給額を計算する際には、標準報酬日額の3分の2に実際の労働日で休業し賃金のない日及び祝日の合計数に乗じて求めます。原則として、日曜日、土曜日は支給対象日ではありません。支給期間も、原則として1年6か月間、結核性の病気の場合3年間となっています。また、在職中は、1年6か月経過後もさらに最大1年6か月の傷病手当金附加金が支給されます。

傷病手当金を受けるための条件
傷病手当金は、次の5つの条件を全て満たしたときに支給されます。
なお、「傷病手当」は雇用保険上の保険給付であり、ハローワーク(公共職業安定所)で基本手当(失業手当)を受給中の方が、15日以上傷病により求職活動出来ない場合に、基本手当に代わって支給されるものであり、健康保険上の保険給付である「傷病手当金」とは別です。ここで説明するのは「傷病手当金」です、これは会社(事業主)からではなく健保組合から出るので会社に気を遣う必要はありません。
傷病手当金受給要件
健康保険の被保険者であること

 健康保険(協会けんぽ・健康保険組合・共済制度)の被保険者に対して支給されます。在職中の傷病手当金受給に関しては、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上ある必要は無く、健康保険の被保険者資格取得直後でも受給要件を満たせば傷病手当金は支給されます。
 健康保険の被扶養者(配偶者・子供等)や、任意継続被保険者(資格喪失後の継続給付受給中の人を除く)、特例退職被保険者、国民健康保険の被保険者には支給されません。
 傷病手当金支給は、健康保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員共済組合法、私立学校教職員共済法、船員保険法にもとづく保険者の被保険者である場合です。組合国保はその名称からわかる通り、国民健康保険法に基づく保険者です。国民健康保険法では、傷病手当金は任意給付となっており、必ず給付すべきものではありません。市町村が保険者の国民健康保険加入者には、傷病手当金の給付はありません。
病気・けがで療養中であること

 病気・けがで療養しているのであれば、自宅療養や、健康保険を使わずに自費で診療を受けていてもかまいません(※)。ただし、健康保険で診療を受けられない療養については支給されません。
また、業務上あるいは通勤途上の事故や災害により病気やけがをしたときは、労災保険の扱いとなるため、健康保険の傷病手当金等は支給されません。
(※)
 健康保険証を持参していなければ、保険適用医療であっても自費扱いとなります。また、退職後に国民健康保険等に加入していなければ、保検適用医療でも自費扱いとなります。
 ここで言う自宅療養とは、医師が診断し、私傷病により療養のため自宅療養が必要と診断された場合のことを言います。医師の診断も受けず、自宅療養していても、傷病手当金の対象とはなりません。
 「美容整形手術など健康保険の対象とならないものを受けたために労務不能状態(例えば、入院が必要になった)となっても傷病手当金は支給されません。(昭和4.6.29保理1704号)」とあるように美容整形手術が失敗したから労務不能状態になったことについては何ら述べられていません。つまり、歯の矯正治療を受け労務不能状態になっても(このようなことがあるとは思えませんが)傷病手当金は支給されないという解釈です。このことから保険適用外の治療を受けても、その医療行為が失敗したため、労務不能状態となり、療養が必要と医師又は歯科医師が意見を述べ、保険者も療養のため労務不能と判断すれば、傷病手当金は支給されます。この場合「第三者行為による傷病届」の提出が必要となります。
仕事につけないこと(労務不能)※医師の証明(意見)が必要

 病気・けがのため仕事ができない場合をいいます。同じ会社で今までよりやや軽い仕事についたり、医師の指示で半日出勤し今までと同じ仕事をするような場合は、労務不能と認められません。
 医師の証明が必要なので、通院または入院が必要になります。
 なお、労務不能かどうかは、医師の意見を参考に、最終的には保険者が決定します。
 「労務不能」であるか否かは、必ずしも医学的な基準で判断せず、その被保険者の従事する業務の種別を考え、その本来の業務に従事できるかどうかを標準として社会通念に基づいて判断します。例えば産業医と面談しても、産業医と面談した日が、その被保険者の従事する業務の種別を考え、その本来の業務に従事出来なければ、「労務不能」となります。
 傷病手当金書類は、科によらず、医師免許を有する医師であれば、誰でも記入可能です。また、研修医であっても、歯科医であっても傷病手当金申請書類は書けます。看護師が書くのは法律違反です。病院の受付の人が医師の記入ミスに気付いて訂正したりも厳密には違反です。医師に連絡し、医師の承諾の元に訂正することは可能です。
 また、診察日も労務不能日に含める事ができます。具体的には、7月15日(たとえ午前中でも)の受診であっても、医師が診察し、その日が労務不能かどうか判断し、証明書に記入します(※)
 なお、傷病手当金の申請書は医師が自分の息子に対しても書けます。特に、法的規制はありません。但し、労務不能でないのに労務不能と書けば、公文書偽造となります。
(※)
医師が診断し、その日の患者の状態から判断するので、その日が労務不能の意見を書けます。なお、午前中に医師の診察を受け労務不能と判断されたが午後から出勤した場合。午前中の診断時に労務不能なくらい体調不良なのに、午後から急遽労務可能なくらい体調が回復するのも不自然な話しだと思いますが、仮に、医師がその日労務不能と意見書に記入しても、実際午後に出勤したのなら、事業主記入欄で出勤の事実を書くこととなります。申請期間にその日が含まれていても、最終的に傷病手当金の支給・不支給を決定するのは、保健康保険組合等の保険者ですので、医師が労務不能の意見を書いていても、保険者は、その日を労務不能の日とは判断せず、その日は傷病手当金は支給されません。
連続3日以上仕事を休むこと(待期期間の完成)

 傷病手当金は、休みはじめて4日目から支給されますが、最初の3日間を「待期期間」といい、この待期期間が完成してから支給開始となります。待期期間3日間は連続していることが必要です。
 従って、2日休んで1日出勤し、その後再び2日休んでも、待期は完成しないので支給されません。
 3日間連続で休んだ後(=4日目に)1日出勤した場合は、既に待期期間が完成しているので、その翌日(=5日目)に休んだ場合、傷病手当金が支給されます。
 なお、待期期間に給与等を受けていたかどうかは関係ありません(つまり、待期期間には土曜日・日曜日・祝日・公休・調整休日・特別休日・有給休暇等を含めます。会社から休職手当が出ていても含めます)。
 傷病で労務不能となり就業時間内に早退した場合は、その日から起算して3日間で待期期間は完成します。就業時間後に傷病で労務不能となった場合には、翌日から起算して3日間で待期期間は完成します。
待機期間(450×350)
*出勤しても直ちに早退した場合は、会社が欠勤扱いし、医師も労務不能の日として証明してくれれば、傷病手当金の対象になると考えられます。少しでも就労の実態があれば、最終的には保険者が労務不能かどうかを判断し、傷病手当金の支給日になるか不支給日になるか決定します。
*本来の終業時刻が終了し、残業(超勤)中に労務不能になり退社した場合等、就業時間後私傷病で労務不能となった場合は、翌日から起算し連続する3日間の私傷病による労務不能状態があれば、待期期間は完成します。
*待期期間(労務不能期間)の合算はありません。途中で会社を変われば、そこから待期期間を計算します。たとえ、同一健保・グループ会社であってもです。
*私傷病による連続する3日間の労務不能期間のことを「待期」期間と言いますが、この3日間という期間の完成を待つという意味で「待機」ではなく「待期」という表現が用いられているのだと思慮します。
*待期期間は、必ずしも病院の営業日でなくてもかまいません。例えば、日曜日に救急搬送され通院してる病院と別の病院に搬送された場合や、地元のかかりつけの開業医は休診日だが個人的に「急に具合悪くなった、今日は休診なのは分かっているが、もし今暇なら、診てくれ」と個人的に医師の携帯電話に電話した場合などでもOKです。
*18か月以内なら、再発時には、待期期間の3日間は不要です。
*労務不能期間・待期期間は、転籍では合算不能、出向や雇用形態変化なら合算できます。
(転籍…転籍とは、出向で勤務していた勤務先に元勤務していた先を退職し、入社することをいいます。従いまして、退職を伴いますので、労務不能期間は合算出来ません。
出向…出向とは、元から勤務していた先に在籍していながら、関連会社で就労することをいいます。この場合は、退職は伴いません。通常、勤怠管理、給与の支給は元の会社で行います。出向の場合は、労務不能期間は合算されます。
同一会社で、契約社員から正社員になる…この場合も退職を伴いませんので、労務不能期間は通算されます。)
*待期期間3日間の病名と4日目以降の病名が一致することが原則です。但し、待期期間3日間の病名と因果関係がある病名でも構いません。
*以上、日勤勤務の場合を想定しています。勤務時間が2日間にまたがる場合は、2日目で早退した場合、それが残業ではなく正規の勤務時間であったとしても、その日から労務不能という扱いになります。
例)2日間にまたがる勤務とは、9時〜翌9時、16時〜翌13時など
給与等を受けられないこと(連続する労務不能3日間後に労務不能により報酬の支払いが無い日があること)

 会社(事業主)が給与等を支払っている日については支給されません。したがって、有給休暇を使って休んだときは支給されません。
ただし、給料等をもらっても、その額が傷病手当金より少ないときは、その差額が支給されます。

傷病手当金を受ける場合(役員も受給可能です)
 傷病手当金申請書(傷病手当金請求書と呼ぶ場合もあります)に、会社(事業主)の証明と医師の証明を受けて、会社もしくは健保に提出します。
会社と健保のどちらに提出するかは会社によります、会社に提出する場合は会社を通して健保に送られます。
 一般的には「会社に提出→会社が労務不能の証明を書く→会社が健保に出す」という流れです。
なお、退職後の場合は、直接健保組合に送付します。
なお、医師の証明は、病気・けがの経過などと労務不能の証明に関するもので、実際に仕事につけなかった期間については請求できますが、不確定な未来の期間については請求できません。
 役員でも受給要件を満たせば傷病手当金を受給できます。但し、役員の場合は通常、私傷病の欠勤についても役員報酬が支払われますので、取締役会で「私傷病による欠勤に対しては報酬を支給しない」旨のお決議を行い、取締役会議事録に記録し、傷病手当金申請の際に、この取締役議事録会の写しを添付することが必要です。

傷病手当金申請書(請求書)の書き方・送付先
 健保組合等により様式が違うのでここでは簡単に書きます。
 「第三者行為によるものですか」との項目には通常「いいえ」と答えます。「はい」と記入した場合は、初回申請時のみ「第三者行為による傷病届け」(※)の提出が必要となります。
 「療養のために休んだ期間」は、申請期間=労務不能期間であり、医師に書いてもらう「療養担当者が意見を記入する欄」を医師に書いてもらって、これを転記します。この日付は、その医師の初診日から現在(当日の診察日を含む)の日付までを医師に書いてもらう事が出来ます。初回の申請時、待期期間の3日間も含めて記述します。
 「発病又は負傷の原因」は、医師に書いてもらう欄ですが、精神疾患であれば、「不詳」と書くのが一般的です。ここで「業務上の〜」などと業務に起因する原因を書くと労災と判断され傷病手当金が不支給になる場合があります。
 「診療実日数」は最低、毎月1度は必要です。もし、1ヶ月に1度も診察を受けていない場合は、保険者から「日常生活・療養状況申立書」の用紙が送付されてくることがあります。これに内容を記入し保険者に返送する必要があります。保険者が申立書に納得すれば、傷病手当金が支給されます。

↓某健保組合の傷病手当金申請・請求用紙で記入例を説明
傷病手当金申請・請求用紙記入例
 送付先は、申請期間に会社在籍期間がある場合は、会社を通じて健保組合に提出(郵送)します。 申請期間に会社在籍がなくなれば、会社を通さず、直接、健保組合に提出(郵送)します。1日でも会社在籍期間があれば、(送付時点では退職していても)「会社に提出」ということになります。
 なお、1回目の申請は、退職後であっても、会社在籍中に待期期間+1日以上の労務不能の日があることが受給要件ですから、会社にそのことを証明して貰うため、必ず、会社経由となります。直接健保組合に送付することは出来ません。
 会社が倒産した場合、会社倒産後も残務整理する人がいます。その人から証明がとれるなら、会社在籍期間分の証明を取り付けるようにして下さい。それが不可能なら、健保組合にその旨話し、傷病手当金が受給出来るように交渉して下さい。なお、申請期間に会社在籍期間がなくなれば、直接、健保組合に傷病手当金支給申請書を送付して下さい。
 労務不能期間と労務した期間が混在していても1枚の申請書に書けます(労務不能期間と労務した期間を混ぜて書いても構わない)。
第三者行為かどうかで受給要件や額が変わることはありません。全健保に強制される法的措置です。保険者は、傷病の原因が第三者にある場合は、被保険者に給付した範囲内で、被保険者が第三者に対して持っている損害賠償請求権を譲り受け、第三者に求償します。

シャチハタの印鑑は年月が経過するとみにくくなるので、3文判でもいいので、朱肉で押印する印鑑が必要です。振込先に指定した銀行口座に届出の印鑑と同一である必要はありません。1年6か月の途中で印鑑を変更しても大丈夫です。なお被保険者本人が署名をした場合は押印を省略出来ますが、被保険者本人以外の方が記入する場合は押印を省略出来ません。

第1回目の申請書を記入する際には、待期期間を含めて記入します。よって、初回申請時のみ、傷病手当金申請書に書いた日付と、実際に支給される対象期間がズレます→→例:通常、傷病手当金申請書に書いたのが「労務不能期間1月1日〜1月31日」の場合、健保の「支給通知決定書」の「支給対象期間」も「1月1日〜1月31日」になる。 ただし、それが初回申請の場合、申請書には「1月1日〜1月31日が労務不能」と書くが、健保の支給決定通知書には、「支給対象期間 1月4日〜1月31日」と載る。

上記画像の場合、「実診療日数」を記入する欄があります。入院の場合は、土日祝日を含めて実診療日数を記入します。看護師による検温、血圧測定、病気を考慮した食事の提供等が行われるからです。

傷病手当金申請書の様式は統一されていません。特に法律で様式まで定められおらず、また、統一しようという動きもありません。呼び方も「健康保険傷病手当金支給申請書」であったり、「傷病手当金・傷病手当金付加金申請書」であったり、健保により異なります。

家族や会社の人に記入を委任しているのであれば、代理で記入することも出来ます。訂正の場合も同様に、被保険者記入欄に関し、会社の人に記入を委任している場合は、会社の人に訂正してもらうことができます。ただし、保険者に代筆や訂正をしてもらうことは出来ません(記入の委任をしていないので、健保の担当者に加筆、訂正をしてもらうことは出来ません)

退職後の傷病手当金請求の書き方は、健康保険組合によりけりです。退職日まで労務不能期間全てを年次有給休暇で消化する場合、退職日を申請期間の末日とする傷病手当金支給申請書を出して欲しいと言われる健康保険組合もあります。一方、退職後の期間を含めて申請しても構わないという健康保険組合もあります。連続する3日間+1日の労務不能期間(全て年次有給休暇を消化)をとりあえず申請するというのも、あるようです。

本当は31日間労務不能なのに医師が誤って「労務不能30日間」と記入しそのまま健保組合(保険者)に提出してしまった場合、傷病手当金請求書を保険者から返却を受け、医師に訂正を依頼し、医師が30日を二重線で消し、31日と記入し、訂正印を押したものを保険者に再提出します。
なお、「前回労務不能を『1月16日〜2月15日』と書いたが、誤って『労務不能30日間』と書いてしまったので、今回請求で『2月15日〜3月15日』で請求する」といった行為つまり重複請求は出来ないと考えます。あくまでも、前回の請求書で31日分の支払いを求めるべきです。仮に、保険者(健康保険組合等)が誤って、30日分しか支払がなくても、重複請求ではなく、別途、保険者と連絡をとり請求すべきと考えます。普通は、保険者は30日ではなく、31日であることに気づくはずですので、その時点で何らかの連絡があると思いますが……。

上記図では、左側の被保険者記入欄と、右側の医師記入欄の記述を一致させることとなっています。しかし、例えば、申請期間が11月16日〜12月15日、医師が労務不能と認めた期間が11月16日〜12月20日であっても、労務不能と医師が意見を記入している期間が申請期間を全てカバーしているので、問題ないと考えます(医師がそのようにしか書いてくれなくても違反ではありません)

総務省による「信書」の定義は次の通りです。信書とは、「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」と郵便法及び信書便法に規定されています。つまり、傷病手当金請求書、傷病手当金支給申請書も「信書」に該当します。

傷病手当金の請求単位と、通院頻度
 傷病手当金は1ヶ月単位で請求するのが通常ですが、例えば3ヶ月分まとめて請求したりも出来ます。ただし、健保組合で独自の規約を設けている場合もあります(※1)
 医師の診察は、最低、毎月1度は受ける必要があります。もし、1ヶ月に1度も診察を受けていない場合は、保険者から「日常生活・療養状況申立書」の用紙が送付されてくることがあります。これに内容を記入し保険者に返送する必要があります。保険者が申立書に納得すれば、傷病手当金が支給されます(※2)

※1
 健康保険組合の中には、規約で、請求出来る単位(1か月分等)や請求締切日を設けて、その日までの請求であれば、指定した日に口座に入金するシステムをとっていることもあります。保険者が健康保険組合の場合は、請求に関する事項を確認し、それに従い請求して下さい。
 1度にまとめて請求しても、何十枚にも分割しても、時効期間内であれば、理論上は問題ありません。ただし、何十枚も書くと傷病手当金支給申請書の作成費用がその分多く必要となります。また、1枚の傷病手当金支給申請書に書ける日数は、全国健康保険協会の場合、最大90日となっています。
 なお、傷病手当金の請求は18回が限度と言うことではありません。支給開始日以降最大1年6か月(暦日)労務不能期間(医師の意見が必要)が続けば、傷病手当金はその間の分が支給されるという意味です。よって、「2か月分を18分割して傷病手当金請求書に書いたら、2ヶ月で終了してしまう」といったことはありえません。
※2
医療機関が自ら定めたルールにより、月2回以上の通院が必須の場合もあります。
ちなみに、毎月1回は通院必要というのも、厚労省・健保側の法律ではなく、医師側のルールでしょう。少なくとも1か月間一度も通院していない状態では、労務不能と判断出来ないという考え方です。また、仮に1か月に一度の通院がなくても医師が労務不能の意見を書いてくれたとしても、保険者(協会けんぽ又は健康保険組合等)の方で、1か月に一度も通院していない状態で労務不能と最終的に判断出来るか疑問があるため、通常は「日常生活・療養状況申立書」という書類が送付されてきて、その記入・返送を求められ、その内容により支給・不支給の決定がなされます。

支給される額と、給与・賞与・見舞金との調整
 傷病手当金(法定給付)の受給額は、労務不能1日につき、「標準報酬日額」(平均月給日額に相当)の3分の2(約67%)です。但し、最初の連続する労務不能3日間に対しては支給されません。
 「標準報酬日額」は、「標準報酬月額」を30で割ったものです。「標準報酬月額」は、毎年4〜6月の給与(基本給・諸手当・残業(超勤)代・通勤交通費を含む。支払基礎日数が1ヶ月17日以上(※1)ある事が必要。臨時に受け取る出張手当や年3回以下の賞与は含まない)の平均額を求め、その金額を「健康保険料額表」にあてはめ求めます。これを「定時決定」と言います。従って、傷病手当金日額には残業代が含まれます。定時決定された「標準報酬月額」は、原則として、その年の9月から翌年の8月まで適用されます。
 ただ、難しい事を抜きにして大雑把に言えば、「残業代を含む、手取り給料の67%」が支給されると思ってください。傷病手当金は非課税所得ですから、所得税・住民税がかかりませんので、実際は67%より多く感じるかもしれません。もし「働いてるときの給料よりも傷病手当金の方が高い」というような逆転現象が起きても、特に調整はありません(傷病手当金は住民税非課税とはいえ、住民税は前年所得にかかる関係上、明細上は傷病手当金からも住民税が控除されるでしょうし、逆転現象が起きるとは考えにくいですが)。
 なお、傷病手当金は、税法上は非課税ですが、一般的には収入(※2)と見なされます。
 傷病手当金受給中に、給料等をもらっても、その額が傷病手当金より少ないときは、その差額が支給されます。ただし、傷病手当金と賞与(3か月を超える期間毎に支給されるもの)との併給調整はありませんので、その場合は傷病手当金の減額はありません。
 また、労働組合や会社内での互助会からの見舞金を受領することで、傷病手当金が減額されることはありません。減額されるのは、あくまで「会社から給料が出る場合」です。また、会社からの給料であっても「退職金」との併給調整はありません
※1
17日以上とは、実労働日数及び有給休暇のことです。休日(土曜日&日曜日、サービス業等なら公休日・特別休日・調整休日など)は含みません。実労働日数ですから、サービス業で、土日も働く場合は含めます。また、カレンダー通りの職業であっても日曜に出勤すれば含めます。
※2
ただし、自立支援医療における収入を計算する場合、傷病手当金は収入に含まず、障害年金は「厚生労働省令で定める給付」として特別に収入とされていますので、収入に含み、それにより自立支援医療の月額自己負担上限額が異なってきます。障害年金は非課税所得のため、市役所では、市民が障害年金を仮に受給していたとしても、その事実を知りませんので、市民側から申告する必要があります。詳細は「障害年金・障害手当金・特別障害給付金(用語集のオマケ付)(同一サイト内リンク)のページの「用語集」の「傷病手当金や年金の税金あれこれ」を参照。

標準報酬月額には、年3回以内支給の賞与(ボーナス)は含まれません。毎月や各月で支給されるボーナスは、会社から支給される報酬として、傷病手当金との併給調整の対象となります。

給与と傷病手当金の調整における給料とは、税・社会保険料等控除前の総支給額のことです。手取額ではありません。

休職期間中に傷病手当金より多い金額が支給される場合は、通常、傷病手当金を請求しません。病気が長引き、無給又は一部支給となった時点で傷病手当金を請求します。休職期間中は、一般の企業の場合、無給であるのが普通です。その場合は、傷病手当金を請求します。私傷病による休職で、通常の給与を支給している企業は、一部の大企業か、一部の官公庁位でしょう。これは、社員の福利厚生を充実し、優秀な人材の確保を目的としています。

標準報酬日額は標準報酬月額÷30です。 標準報酬月額は、給与を元に決められた等級に対応したものですので、必ずしも「給与=標準報酬月額」とはならないのでご注意を。 たとえば、給与が31万以上33万未満の方は、全員標準報酬月額は32万です。

毎年4月〜6月の給与を平均した額をもとに標準報酬月額が決定され、その年の9月1日から、原則として、翌年の8月31日まで適用されます。この標準報酬月額を30で割り標準報酬日額を算出します。傷病手当金日額は、この標準報酬日額に3分の2をかけた金額となります。例えば、標準報酬月額が24万円とすると、標準報酬日額は8,000円となり、傷病手当金日額は、5,333円となります。

「4〜6月に働いた分」と「4〜6月に振り込まれるお金」は一致しませんし、給料の〆日は普通は15日か25日なので、標準報酬月額のように1ヵ月きっちりという計算ではないでしょう。これは、「4月〜6月に振り込まれた分」の平均額を標準報酬月額等級区分にあてはめて、標準報酬月額を決定します。

入社後すぐに休職した場合など、ベースとなる計算式がない場合について。労働契約を締結した場合、そこに基本給や諸手当、通勤交通費等が記入されているはずです(口頭で提示される場合もあります)。これらの金額の合計額に残業見込代を加えた金額を、「健康保険料額表」に当てはめ、標準報酬月額を決定します。これを「資格取得時決定」と呼んでいます。この標準報酬月額を30で割り、10円単位にしたものが標準報酬日額です。傷病手当金日額は、この標準報酬日額の3分の2となります。

転職すれば、新しい会社の給料見込がベースになります。転職してすぐに労務不能になり傷病手当金を受給する場合でも、以前の会社(以前の健保)がベースになることはありません。健保に空白期間があるなしは関係ありません。また、「会社が変わったが、健保が変わっていない場合」も、あくまでも再就職先の給与をベースに計算します。空白期間のあるなしは関係ありません。保険証の記号・番号も変更となります。

派遣社員は、派遣元の会社から支給される給与に基づき、標準報酬月額が決定されます。

会社から通勤交通費が支給されてる場合は、その支給された通勤交通費も含むという意味です。会社から通勤交通費がそもそも支給されていない場合は、通勤交通費は含まれません。また、例えば、新幹線通勤で、新幹線特急料金は自腹を切っている差額部分は、通勤交通費には含まれません。

現物給付であっても「労働の対価」として受領したものは、報酬となります。従って、標準報酬月額を計算する際には、現物給付額も含めて計算します。

平成19年4月に健康保険法が改正されるまでは、傷病手当金の支給額は、標準報酬日額の6割(60%)でしたが、改正後は、標準報酬日額の3分の2(約67%)に引き上げられました。これは、傷病手当金に約7%の賞与分を上乗せしたものと言われています。なお、年3回までの賞与からは、標準賞与という形で、健康保険料が天引きされています。

なお、傷病手当金の上限は1日当たり26,886円、30日分で806,580円と決まっています(協会けんぽの場合。121万円÷30=40,330円 40,330円×2/3=26,886円 26,886円×30日=806,580円)。健康保険では、月収が200万円や300万円の人でも、標準報酬月額の上限は、全ての健康保険で121万円と定められています。この標準報酬月額を元に健康保険料が決定されます。ちなみに年金を計算する際の標準報酬月額の上限は、62万円と定められています。
なお、全ての健康保険組合において、上限は協会けんぽ同様、30日分で806,580円とは限りません。健康保険組合の中には、規約を設け、独自の上乗せ給付として傷病手当金付加金を設けているところがあります。例えば、千葉銀行健康保険組合では、傷病手当金日額は、標準報酬日額に85/100を乗じた金額としています。この場合は、30日分で1,028,400円となります。

住民税は、前年度の所得にに対し課税(1月から12月までの所得に対してかかる税金を、翌年の6月から翌々年の5月にかけて支払う「後払い」システム)されるので、翌年の住民税が傷病手当金分は非課税となります。例えば「2010年12月から収入が傷病手当金のみの生活を開始」した場合、2011年1月1日から2011年12月31日までの収入が0円又は課税所得未満であることを市町村役場が確認できるのは、2012年5月頃です。非課税所得者であることを証明できるのは、2012年6月以降からとなります。

2011年の所得(1月〜12月分)の年末調整又は確定申告は、2011年12月から2012年3月中旬頃まで行われ、2012年2月〜5月の間で、2011年の所得が非課税かどうか判明します。従って市役所が2011年の非課税証明書が発行出来るようになるのは、2012年6月からとなります。これ以前に2011年の非課税証明書を入手することは困難です。また、入手できるのは6月1日が平日であっても必ずしも6月1日とは限りません。正確には6月の上旬ごろより発行されます。年度によって、最初の発行日は多少変動します。

標準報酬月額を決める場合にそのもととなる報酬は、賃金、給料、俸給、手当、賞与、その他どんな名称であっても、被保険者が労務の対償として受けるものすべてを含みます。ただし、大入り袋や見舞金のような臨時に受けるものや、年3回以下の賞与は含まれません。なお、通勤手当は、所得税法上100,000円まで非課税とされていますが、社会保険では、このような取り扱いはされず、通勤手当の全額を報酬に含めます。金銭(通貨)に限らず、現物で支給される食事や住宅、通勤定期券も報酬に含まれます。

標準報酬月額は、「年3回以下の賞与は含まない」は、逆に言えば「年4回以上は含む」ということだが、これは、「年4回以上賞与(ボーナス)があれば、その全てを計算式に含む」という意味です。年4回以上の賞与の合計金額の12分の1を算出し、給与月額に加え、標準報酬月額を算出します。「年3回を超える賞与(ボーナス)があれば、3回を超えた分(=4回目以降)分のみを計算式に含む。すなわち、年10回ボーナスがあれば、10−3の7回分を計算式に含む」という意ではない。

個人毎の年金・健康保険など社会保険の控除料の計算や雇用保険料の控除額の計算というのは、会社の給与担当者が行っています。傷病手当金の支給額の計算は、健康保険の保険者(健康保険組合等)が行っています。あってはならない事ですが、人間が行うことですから、計算ミスが絶対にないとは言えません。社会保険料の控除等はパソコンで処理していると思いますが、社会保険料等は毎年変更されています。入力ミスが多いようです。

標準報酬日額は、標準報酬月額を30で割って求めます。これに3分の2を乗じた金額が傷病手当金日額となります。1か月を30日と見做し、土曜日、日曜日も含めています。従って、土曜日、日曜日を支給対象外とはいたしません。共済組合等の場合は、標準報酬月額を22で割って標準報酬日額を求めます。これに3分の2を乗じた金額が傷病手当金日額となります。(付加給付は除きます)1か月を22日と見做し、土曜日、日曜日を除外しています。そのため、土曜日、日曜日は支給対象外として支給日を計算します。

休職中の年金・保険等の自己負担分の支払方法ですが、大きな会社であれば、あらかじめ、休職時等の個人負担の保険料負担方法を定めています。そうした定めのない場合は、毎月指定日までに会社の指定口座に振り込むか、あるいは、休職明けに一括して支払うか、会社と労働者が相談し決めます。但し、一括して支払う場合は、休職期間が長い場合は大きな金額となりますので、毎月社会保険料に相当する金額を貯めておく必要があります。この場合、選択権・決定権は、労働者側にあるとも会社側にあるともいえません。

休職中は定時決定による標準報酬月額の算出が出来ません。そのため、「従前額保障」の考えのもと、休職前の標準報酬月額に基づき傷病手当金が支給されます。

転籍は、退職を伴いますので、入社日以降は、新しい勤務先の標準報酬月額が適用されます。出向は、6月30日現在の標準報酬月額が適用されます。同一会社で、契約社員から正社員になる場合も、6月30日現在の標準報酬月額が適用されます。
(傷病手当金には関係ない話です)例えば、ボーナスの査定対象が「1月1日〜3月31日」であり支払日が「4月15日」である場合、「4月1日から休職した場合」でも、会社に在籍し、査定期間が休職以前であれば、ボーナスは支給されます。

質問「傷病手当金の受給額の計算、すなわち標準報酬月額の計算方法ですが、通常4〜6月の平均報酬月額の2/3が支給されると思うのですが、うちの会社は3か月ごとに社会保険料の再計算をし、その都度変更します。 この場合、直近3か月の平均報酬月額で計算されるのでしょうか? それとも規定通り4〜6月の分で計算されるのでしょうか?これによって1か月の受取額は10万弱くらい変わってしまうので・・・」に対しては、「これは、健康保険組合が規約を設け独自に行っていることとだと思います。従いまして、傷病手当金が3か月毎に算出された標準報酬月額を使って計算されているのか、4〜6月分の平均報酬月額をもとに算出された標準報酬月額を使って計算されているのかは、健康保険組合に確認して頂かないと分かりかねます。負担に見合った給付という考え方からすると前者のような気がしますが……」。
受給額と受給期間(384×160)

標準報酬月額(518×547)

支給される期間
 「傷病手当金」の支給期間は、支給開始日から1年6カ月間(1日単位)です。
なお、1年6カ月間とは、傷病手当金が支給された実日数ではなく、暦の上での1年6カ月間という意味です。
従って、支給開始日から1年6カ月間たてば、その間の出勤・欠勤日数に関係なく、その病気・けがについての傷病手当金等は打ち切られます(途中具合がよくなったので出勤した日があっても、支給開始の日から1年6ヵ月を超えた期間については支給されません)。
 なお、傷病手当金の請求は18回が限度と言うことではありません。支給開始日以降最大1年6か月(暦日)労務不能期間(医師の意見が必要)が続けば、傷病手当金はその間の分が支給されるという意味です。よって、「2か月分を18分割して傷病手当金請求書に書いたら、2ヶ月で終了してしまう」といったことはありえません。
 ところで、会社の定める休職期間と、健保組合の延長分を含めた傷病手当金支給期間は、多くの場合一致していますが、必ず一致しているとは限りません。
傷病手当金受給可能期間その1(540×109)
 
また、1年6カ月間とは、同じ病気・けがについてという意味で、ある病気で傷病手当金を受けている間に、これと関係のない病気・けがをして引き続き仕事を休む場合には、支給期間はそれぞれについて計算されます。ただし、重複しては支給されません。
傷病手当金受給可能期間その2(540×109)
「うつ病で傷病手当金受給中に骨折した場合」、骨折で傷病手当金の受給権が発生するなら、被保険者の選択でどちらの病名で申請するかを決めます。通常は、うつ病の方が療養期間が長いので、途中で骨折による傷病手当金を選択する人はいないと思いますが。骨折による待期期間3日間については、うつ病で労務不能状態にあるなら、うつ病による傷病手当金を申請すれば受給出来ます。
 なお、待期期間3日間の病名と4日目以降の病名が一致することが原則ですが、但し、待期期間3日間の病名と因果関係がある病名でも構いません。また、18か月以内なら、再発時には、待期期間の3日間は不要です。
 なお、待期期間3日間の病名と4日目以降の病名が一致することが原則ですが、待期期間3日間の病名と因果関係がある病名でも構いません。

支給期間の起算日について
 現実に支給を開始した日が、傷病手当金の支給期間の起算日となります。仮に3日間の待期を完成して4日目には就労し、5日目に再び労務不能となったときは、5日目から傷病手当金の支給が開始され、その日が起算日となります。
*傷病手当金の支給に関する起算日は、待期期間経過後、傷病手当金の支給を開始した日からです。具体的には、「6月16日から労務不能になり、3日間の待期期間を経て、6月19日より傷病手当金受給になった場合」の起算日は、6月19日からとなります。

けがは治ったものの障害が残り、労務不能となったとき
 労務不能ではあっても、療養のためではないので、健康保険の傷病手当金は支給されません。なお、症状が固定し、その障害の程度が国民年金法および厚生年金保険法により定められている障害等級表に該当する場合には、国民年金の障害基礎年金および厚生年金の障害厚生年金あるいは障害手当金(一時金)が支給されます。

障害厚生年金・障害基礎年金・障害手当金を受けるようになったとき
 厚生年金保険の障害厚生年金を受けるようになったときは、傷病手当金については、障害厚生年金等相当額を控除した額が支給されます。
 もう少し詳しく言うと、同一傷病による傷病手当金と障害厚生年金は同時に受給出来ません。障害厚生年金が優先して支給されます。但し、傷病手当金日額が、障害厚生年金日額(障害厚生年金を360で割ったもの)を上回る場合は、その差額が傷病手当金として支給されます。上記厚生年金には、障害厚生年金と障害基礎年金が同時に支給される場合は、その合算額となります。
 障害手当金を受けるようになったときは、傷病手当金の支給額の合計が障害手当金の額に達するまで、傷病手当金は支給されません

 厚生年金法の障害手当金は、障害厚生年金のような年金給付でなく、一時金給付です。なので、日額換算することはできません。よって、傷病手当金との調整を行う場合には、傷病手当金の日々の合計額が、障害手当金の額に達するまで、傷病手当金は支給されないことになります。例えば、傷病手当金の日額が4,800円で障害手当金の額が150万円の場合だと、312日分(149万7600円)の傷病手当金が支給停止となり、313日目は、差額分が2,400円(150万円‐149万7600円)支給されることになります。それ以後は、日額4,800円で支給されることになります。
 しかしながら、障害手当金は治った(治癒)した場合に支給される給付であり、(厚生年金保険法第55条)傷病手当金は労務不能であるだけでは、支給要件を満たすことができず、「療養のため」という要件が必要です。治ったというのはそれ以上療養を続けても改善しない場合を指すので、障害手当金と傷病手当金が併給されることはないと思う(小生の個人的な考えですよ)のですが、このあたりの解釈は実際はどうなっているんでしょう?
→↓
治ったというのは、「その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至つた」ことを意味し、傷病によっては、治療の中止を意味するものではなく、引き続き治療を受け、療養のため労務不能状態にある場合」も考えられます。そのような場合を想定して、傷病手当金と障害手当金の併給調整規定があるものと考えられます。

障害年金と同一の病気・ケガに限り打ち切りされるのであって、別の傷病理由で傷病手当金を受給している場合は打ち切りにはなりません。異なる傷病により傷病手当金と障害厚生年金が支給される場合は、両方とも支給されます。

健康保険の場合、1か月は30日と見做します。例えば、標準報酬日額は、標準報酬月額を30日で割ったものです。従って、1年は、30日×12か月=360日と見做して、年金の日額を算出する場合は360で割ることとなっています。

障害年金の申請において「障害認定日請求」をし、障害年金の支給が決定すれば、障害認定日(初診日から1年6か月を経過した日)の属する月の翌月から障害年金が支給されます。障害年金が遡って支給される場合で、その期間に傷病手当金を受給していれば、1日につき障害年金÷360の金額を健康保険組合に返還する必要が出てきます。(健康保険組合へ年金証書の写しを送付し、健康保険組合で計算し、請求書が送られてきます。)

傷病手当金を受給している間に障害年金を申請する権利が発生しても、申請することは法的義務となっていません。申請するしないは、本人の自由です。ただし、障害厚生年金・障害手当金の支給を受けることができるようになった場合は遅滞なく健康保険組合に届書を提出するように、健康保険法施行規則第88条に定められています。健保組合から「障害年金を受給しろ」と言われても、健保組合の規約で「傷病手当金受給者は、同じ病気で障害年金を受給出来る場合は障害年金を申請しなければならない」という文言がない限り、拒否出来ます。なお、年金事務所では、障害年金申請者が協会けんぽの傷病手当金を受給しているかどうか、コンピュータ上で確認出来ます。傷病手当金の返還は自主的に行う必要があります。返還を行わなかった場合で悪質な場合は、刑法上の詐欺罪に該当すると思われます。

協会けんぽは厚生労働省と関係が深いので、その給付履歴等はコンピュータに保管されていますが、他の健康保険組合、共済組合、組合国保はコンピュータにデータが入力されていませんので、コンピュータ上での確認は出来ません。健康保険証の記号・番号が分かれば、直接、当該保険者(健康保険組合、共済組合、組合健保)に確認することは出来ます。

同じ傷病で支給される障害共済年金と共済組合から支給される傷病手当金とは、併給調整があります。傷病手当金と「障害基礎年金」「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」とは併給調整はありません。共済組合から支給される傷病手当金と「遺族共済年金」とは併給調整がありません。

傷病手当金と「障害基礎年金のみ支給される」場合は、併給調整がありません。2級以上の障害厚生年金が支給される場合、2級以上の障害基礎年金も合わせて支給されます。この場合は、障害厚生年金と障害基礎年金の合算額と傷病手当金との併給調整があります。つまり、障害基礎年金単独支給の場合は、併給調整がありませんが、「障害基礎年金と障害厚生年金が同時に支給される」場合は、併給調整があるという意味です。

同一傷病でなければ、傷病手当金と障害年金の調整はありません。ただし、例えば、うつ病と統合失調症の場合は、病名は違っていても精神疾患としてひとくくりとなります。この場合は。障害厚生年金(同時に障害基礎年金も支給される場合は障害基礎年金も含む)は全額支給。傷病手当金は、支給停止又は差額支給となります。

なお、障害年金が遡及して振り込まれた場合、その時点では既に会社を退職していても、同じ期間に同じ傷病名で傷病手当金と障害厚生年金を受給することになった場合は、障害厚生年金に相当する部分については健康保険組合に返還すべしということになります。健保組合がなくなっていれば、返還する先がありませんので、返還は不要ということになります。
障害基礎年金のみ受給の場合は、傷病手当金との併給調整規定は有りません。但し、障害基礎年金と障害厚生年金を同時に受給している場合は、障害基礎年金を含めて併給調整規定があります。健康保険の保険者がもつ返還請求権の消滅時効は民法によるので、何年で消滅時効するかは記述を差し控えて頂きます。

障害共済年金を受けられるようになったとき
 障害共済年金又は障害一時金等が支給される場合で、その額が傷病手当金の額より少ないときは、障害共済年金(障害基礎年金の額を含みます)又は障害一時金の額等と傷病手当金の額との差額が支給されます。

老齢厚生年金を受けられるようになったとき
 退職後に傷病手当金の継続給付を受けている人が、厚生年金保険の老齢厚生年金など(国民年金の老齢基礎年金、共済組合の退職共済年金)を受けられるようになったときは、傷病手当金から老齢厚生年金等相当額を控除した額が支給されます。
 もう少し詳しく言うと、定年退職後の傷病手当金は、資格喪失後の継続給付として支給されますが、老齢厚生年金等が支給される場合は、傷病手当金は支給されません。但し、傷病手当金日額が、老齢厚生年金の日額(老齢厚生年金等の年金を360で割ったもの)を上回る場合は、その差額が傷病手当金として支給されます。
*健康保険の場合、1か月は30日と見做します。例えば、標準報酬日額は、標準報酬月額を30日で割ったものです。従って、1年は、30日×12か月=360日と見做して、年金の日額を算出する場合は360で割ることとなっています。

老齢退職年金給付との調整
傷病手当金の支給を受けるべき者(資格喪失後の継続給付受給者に限る)が、老齢又は退職を支給事由とする年金たる給付(老齢退職年金給付)の支給を受けることが出来る時は、傷病手当金は支給されません。但し、老齢退職年金給付の額を360で除して得た額と傷病手当金の日額を比較し、支給される老齢退職年金給付の額が傷病手当金の額より低い場合は、その差額が支給されます。

出産手当金と傷病手当金の併給
出産手当金の支給を受けている期間は傷病手当金の支給は行われません。(傷病手当金と出産手当金が両方支給される日にあっては、出産手当金が支給され、傷病手当金は支給されません。傷病手当金が先に支給されたときは、出産手当金の内払とみなされます。)

労災との絡み
 傷病手当金は、本来業務外の傷病による休業補償として給付されるため、労災事故(業務内での傷病)による労務不能状態に対しては支給されませんが、保険者によっては、「労災認定が下りれば一括して返済を受けること」を条件として、労災申請中でも傷病手当金を支給するところもあります。労災申請中に傷病手当金の受給を希望する場合は、直接保険者に確認して下さい。

休業補償給付との併給調整
 労災保険の休業補償給付を受けている間は、傷病手当金を受給することは出来ません。但し、1日当りの傷病手当金の額が休業補償給付の1日当りの額より多い場合は、その差額が支給されることがあります。
*傷病手当金の受給は、業務外の傷病(私傷病)による労務不能を前提としています。それに対し、労災から支給される休業補償給付は、業務上の傷病による労務不能を前提としています。従って、同じ病気で、傷病手当金と休業補償給付が支給されることは考えられません。例えば、業務上の原因でうつ病で休業補償給付を受給している者が、家で骨折し、傷病手当金を受給する要件を全て満たし、傷病手当金を受給出来る場合、傷病手当金>休業補償給付の場合は、その差額を支給します。通常は、傷病手当金<休業補償給付ですから、この差額支給は特殊なケース以外に考えられません。傷病手当金の支給を決定するのは、健康保険の保険者(協会けんぽの都道府県支部または健康保険組合)です。

振込み時期
傷病手当金は、傷病手当金申請書(請求書)を会社に提出した後、会社が1週間以内に健保組合に提出すれば、1回目は審査に時間がかかるので6〜8週間経過後に指定口座に振り込み、2回目以降は提出後4週間程度で振り込まれます。

退職後
 退職後も、次の(1)〜(5)の全ての条件を満たしていれば、引き続き傷病手当金を受給できます。必ずしも任意継続にする必要はありません。なお、健康保険証の記号番号が必要になる事があるので、会社に返却する前にコピーを取って下さい。
 なお、「資格喪失後の継続給付」とは、退職した会社に在籍中の健康保険の資格で退職後も傷病手当金が継続して給付されるものであり、退職後に加入する任意継続保険または国民健康保険から支給されるものではありません。すなわち、事業所(会社)をご退職され、任意継続加入期間中に新たに発生した傷病については対象となりません。また、退職後に傷病手当金を請求する際、傷病手当金支給申請書の記号・番号欄に、退職後に加入した任意継続保険または国民健康保険の記号・番号を記入しないようにして下さい。
 また、在職中は会社が厚生年金負担分を自動的に控除してくれたと思いますが、退職後は、国民年金は第2号被保険者から第1号被保険者に種別変更する必要があります。住所地を管轄する市町村役場で手続きし、後は納付書に従い毎月全額自分で支払う義務があります。
 なお、通常、退職後の傷病手当金の支給に際しては、「延長傷病手当金」、「付加傷病手当金」等の支給はありません。退職後は、付加給付は支給されません。任意継続に加入しても延長給付・付加給付は支給されません。

(1)退職時に1年以上継続して健康保険の被保険者である事(共済組合加入期間及び任意継続被保険者期間は除く)
(2)在職中に傷病手当金を受給しているか、受給要件を満たしている事。
(3)退職日以後も、在職中から引き続き傷病により労務不能である事。
(4)退職時に傷病手当金の支給が開始されてから、1年6ヶ月未満である事。
(5)加入する健保組合独自の規約に引っ掛かっていない事。

 (1)について、1年間、必ずしも健保が同一であることまでを必要とはしていません。但し、共済組合の組合員期間と合算は出来ませんのと、健保組合間での通算は1日でも空白が空けば出来ません。例えば、A社に2年間在籍していてそこのA健保の被保険期間が2年間あったが、B社に転職してB健保組合になった場合、A健保→B健保の空白期間が1日でもあれば被保険期間の通算は出来ません。A会社の健康保険の資格を喪失した日(退職日の翌日)に、B会社の健康保険の資格を取得すれば、この期間は通算されます。なお、転職に際して期間が空いている場合は、たとえ同一健保であっても、通算されません。通算して1年間になる場合、以前の健康保険の保険者(健康保険組合等)に 加入期間の証明書を書いてもらいます。同一健保で通算して1年ある場合は、口頭で申し出て、保険者(健康保険組合等)が了解すれば、証明書までは必要ないでしょう。どちらにしても、通算して1年あることを、保険者に申し出る必要があります。
 また、休職中であっても健康保険料は納付する義務があるので、極端に言えば、「入社1日目より休職し、そのまま1年間休職した」という場合でも、健康保険の被保険者期間が1年間以上あるので、この要件を満たします。(会社に籍がある限り、会社は毎月、社員の社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料)の半額(給与・賞与の約13%)を負担しなければなりませんし、社員も半額を負担するからです)。
<まとめ>
・共済組合と健保組合の合算は出来ない。
・国保や国保組合との合算も出来ません。
・健保組合同士の合算は(別健保であっても)出来ます。
・1日でも空白があれば、同一の健保であっても合算不可能です。
・共済組合同士の合算は出来ません。
・組合国保でも傷病手当金制度があるのはまれで、組合国保同士の合算は出来ません。
・国保には、そもそも傷病手当金の制度がありませんので、国保同士の合算という概念もありません。

 (2)の「在職中に傷病手当金の受給要件を満たしている事」とは、労務不能期間が連続3日以上+傷病手当金受給可能日(労務不能日)が1日以上あったが(=4日以上の労務不能。医師の証明が必要)、有給休暇等を消化したために、在職中に傷病手当金を受給しなかった場合や、在職中に傷病手当金の申請をしなかった場合などです。この場合は(2)の要件を満たします。在職中に必ず受給していることや受給申請することまでを要件とはしていません。なお、傷病手当金の受給申請は、退職後も2年の時効期間内なら可能です。
 なお、退職後の傷病手当金は、「退職後に、退職してからの日付で申請すること」は出来ません。例えば「7/26退職。8/26に7/27〜8/25のぶんの傷病手当金を初回申請」は不可能です。この例の場合、退職後の傷病手当金の受給要件の一つである「退職時に傷病手当金を受給しているか受給要件を満たしていること」という要件を満たしませんので、傷病手当金の初回申請をすることは出来ません。

 (3)について、「退職日に出勤しない」ようにして下さい。たとえ挨拶回り、私物引取りだとしても、出社してしまうと「労務」と見なされ、「労務不能」が途切れ、傷病手当金支給が打ち切られる可能性があります。たとえ産業医との面談にしろ、「勤務ではない」事を事前に確認しておかないと、どう勤怠付けられるか分かりません。会社の担当者が間違えてしまう可能性もあります。

 (5)は、一部の健保組合は「任意継続が必要」「在職中の休みが全て有給休暇の場合は、退職後の傷病手当金支給を認めない」「取締役の辞任後は支給しない」などの独自ルールがある場合があるので、直接保険者に確認して下さい。

 以上が、条件になります。上記「退職後の傷病手当金の受給要件」を満たしていれば、懲戒解雇(例:休職→傷病手当金を貰う→休職中に、在職中の不正が明るみになり懲戒解雇)されても、引き続き傷病手当金を受給することが出来ます。

退職後の傷病手当金請求の書き方は、健康保険組合によりけりです。退職日まで労務不能期間全てを年次有給休暇で消化する場合、退職日を申請期間の末日とする傷病手当金支給申請書を出して欲しいと言われる健康保険組合もあります。一方、退職後の期間を含めて申請しても構わないという健康保険組合もあります。連続する3日間+1日の労務不能期間(全て年次有給休暇を消化)をとりあえず申請するというのも、あるようです。

傷病手当金の時効
 傷病手当金の時効は、受給権が発生する日ごとに2年となっています。この時効の範囲内なら、退職後でも申請可能です。
 具体的には、2012年2月4日に発生した傷病手当金の受給権は、2014年2月3日に時効により消滅するという意味です。2012年2月5日に発生した傷病手当金の受給権は、2014年2月4日に時効により消滅します。このように傷病手当金は1日を単位として受給権が発生し、2年で消滅時効を迎えることとなります。傷病手当金の受給権は「月」を単位として発生する訳ではありません。

転院
 同じ病院であれば、医師が異なっていても労務不能の意見を書くことが出来ます。しかしながら、病院が変わる場合、たとえグループ病院かつ同じ医師であっても、次の問題点が発生します。
 病院等を転院する際は、「医師は、労務不能の意見は初診日以降の分しか書けない」事に留意して下さい。よって、転院する場合、2つの病院等への通院期間を一時期重複(※1)させる必要があります。
 特に、退職後に傷病手当金を受給している「資格喪失後の継続給付」の場合、申請期間に中断期間があるとその後申請しても不支給(※2になってしまいます。
 具体的には、1月1日から1月31日までの申請書を名鉄病院の医師に書いてもらい、2月1日から2月28日までの申請書をJR病院の医師に書いてもらおうとすれば、名鉄病院には1月31日以降にも通院する必要があり、JR病院には1月31日までに初診を終える必要があります。すなわち、1月末から2月初旬にかけては2つの病院等に通院する必要があります(※1)。
 これは、医師が初診日以降しか労務不能の意見を書けないためで、もしJR病院の初診日が2月10日だとすると、JR病院の医師は「2月10日〜2月28日は労務不能」とは書いてくれますが、2月1日から2月28日までの労務不能とは書いてくれません。そうすると、2月1日〜2月9日までは空白期間となり、傷病手当金の継続受給が出来ません。
※1
この例の場合、JR病院が「初診で、労務不能」と書いてくれるならば、名鉄病院とJR病院は1日も空白なく連続して通院していればよく、重複通院の必要はないのですが、初診では「労務不能」とは書いてくれない場合があるので、余裕をもって上記のような記述にしてあります。
※2
在職中の場合は、「継続して労務不能状態にあること」が受給要件になっていませんので、申請期間の途中に空白期間があっても、後の労務不能期間に対しても傷病手当金は支給されます。

異論(会社に対して)
傷病手当金申請書(請求書)を会社に送付したが、会社が手続きをしてくれない場合は、健康保険法施行規則第33条で被保険者から証明を求められれば応える義務がある事を根拠に証明を求めます。それでも拒まれたら、保険者から指導してもらいますが、それでもなお拒まれたら、その事情を申立書に記載し、傷病手当金申請書(請求書)に添付して、保険者に会社の証明無しに申請します。

異論(医師に対して)
 滅多に無い事ですが、「病院等で治療を受けたが、医師が『労務不能』意見の記入を拒否する場合」があります。この場合は、傷病手当金申請書(請求書)に、医療機関を受診した事実(医療機関名・診察年月日・治療内容等)及び医師がどうしても労務不能の意見書を書いてくれない旨を申立書に書き、添付します。保険者が、レセプト(診療報酬明細書)等も参考にして総合的に勘案して、保険者がそれらで「労務不能」と判断してくれば、傷病手当金が支給されます。
 なお、医師法により、医師は「診断書」の作成を拒む事は出来ませんが、「意見書」の作成は拒むことが可能です。すなわち、「労務不能の意見書」である傷病手当金申請用紙の記入を、医師は拒否出来ます。

*意見書とは、「傷病手当金支給申請書」の「医師の意見書」欄
*話が逸れますが、医師が書くのは「診断書」ではなく、「意見書」であり、次のよう事象も発生します↓

個人の診療所に、2010年11月より2011年9月20日頃まで通い、2011年9月21日より同年10月31日まで大病院に入院しました。退院後は、11月5日と11月16日にもとの個人診療所に行きましたが、そこで、傷病手当金申請書、「11月1日〜11月15日は労務不能」と書いてもらいました。しかし、この個人の診療所では、「11月1日〜11月4日」は、診てないわけで、書けないはずではないですか? それとも、個人の診療所でも9月に診ていたので、11月4日までも労務不能が連続してると判断できたのでしょうか? でも、個人の診療所では、「9月21日〜10月31日は、入院中の病院でなければと書けない」と言われたので、その理屈で言えば、11月1日〜4日も、書けないはずでは???

医師が書くのは「意見書」です。診断書ではありません。従って、医師が過去の通院歴からみて「11月1日〜11月4日」も労務不能と判断した意見を述べるだけです。その期間が最終的に労務不能であるか否かを判断するのは保険者です。

異論(健保組合に対して)
万一傷病手当金の申請が却下された場合、「不支給の通知書」が来ます。これに不服があれば、通知を受け取った日の翌日から60日以内に各都道府県に配置されている社会保険審査官に対し、不服の申し立て「審査請求」をします。
「審査請求」でも不支給処分が取り消されず、なお不服があれば、東京に設置されている社会保険審査会に不服の申し立て(再審査請求)を行います。
この再審査請求でも不支給処分が取り消されず、社会保険審査会の裁決に不服がある場合は、地方裁判所に行政訴訟を起こし、支給を求める事になります。
*保険者が会社に配置転換を求める権利はありません。保険者は、傷病に罹る前に従事していた労務を基準にその業務に復帰できるかどうかで判断します。従って、「デスクワークなら足が骨折していても労務できるはず。会社に配置転換を要望すればいい」とかいうことで、労務不能が認められない(傷病手当金が不支給になる)ことは考えられません。

傷病手当金受給中のアルバイト
 傷病手当金の受給要件の一つに「労務不能により報酬の支払がないこと」というのがあります。従って、傷病手当金受給中にアルバイトをすることは原則として禁止されています。但し、次のような通達があります。
「被保険者がその本来の職場における労務に就くことが不可能な場合であっても、現に職場転換その他の措置により就労可能な程度の他の比較的軽微な労務に服し、これによって相当額の報酬を得ているような場合は、労務不能には該当しないものであるが、本来の職場における労務に対する代替的性格をもたない副業ないし内職等の労務に従事したり、あるいは傷病手当金の支給があるまでの間、一時的に軽微な他の労務に服することにより、賃金を得るような場合その他これらに準ずる場合には、通常なお労務不能に該当するものであること。」(平成15年2月25日保保発第0225007号)
 傷病手当金受給中に出来るアルバイトの範囲については、保険者(協会けんぽの各都道府県支部または健康保険組合)に確認した方が良いでしょう。
 なお、勤務時間外に会社での健康診断を受けただけでは、労務可能と判断される可能性はありません。

傷病手当金生活中の借金をする方法、また、差し押さえられるか
 傷病手当金は、源泉徴収票に載りませんので、お金を借りるのは困難です。振込通知書を直接見せるくらいしか、傷病手当金受給の証明にはなりません。
 なお、保険給付は、受給権者の生活を保護するため、受給権の譲渡、担保としての提供、差し押さえが禁止されています(健康保険法第61条)。実際に給付された傷病手当金に関しては、民事執行法第131条(差押禁止動産)に該当する場合は、差押えすることが出来ません。

傷病手当金の確定申告・税法上の扱い
傷病手当金は非課税所得であり、申告の必要はありません。住民税・所得税ともかかってきません。健保組合によっては傷病手当金に独自の付加金が付きますが、その部分も含めて非課税です(要するに「健康保険から給付されるものは非課税」です)なお傷病手当金は、税法上は非課税ですが、一般的には収入と見なされます(※)(よって、傷病手当金を受給していてそれが一定額以上であれば、家族がいて働いている場合でも、その扶養には入れません)。
しかし、「傷病手当金を確定申告する場合」という場合もあります、それは次のような場合です。

(1)傷病手当金を受給中に、傷病手当金受給中でも出来る程度の超簡単なアルバイトをしている場合。
(2)会社をその年に退職して、再就職しておらず(つまり無職)、傷病手当金の受給だけ続けている場合。

会社に在籍してれば確定申告は不要です。退職して年内に再就職をしていれば、前社の源泉徴収票を提出して年末調整してもらって下さい。退職して再就職してない(=無職)のであれば、退職した翌年の2月16日〜3月15日に税務署にて確定申告して、払い過ぎた税金を戻して下さい(源泉徴収票が必要)。

傷病手当金は、収入です。但し、課税所得を計算する際には、非課税所得として、課税される収入には算入しないという意味です。
*なお、住民税は、前年度の所得に対して課税(1月から12月までの所得に対してかかる税金を、翌年の6月から翌々年の5月にかけて支払う「後払い」システム)されるので、翌年の住民税が傷病手当金分は非課税となります。例えば「2010年12月から収入が傷病手当金のみの生活を開始」した場合、2011年1月1日から2011年12月31日までの収入が0円又は課税所得未満であることを市町村役場が確認できるのは、2012年5月頃です。非課税所得者であることを証明できるのは、2012年6月以降からとなります。
*2011年の所得(1月〜12月分)の年末調整又は確定申告は、2011年12月から2012年3月中旬頃まで行われ、2012年2月〜5月の間で、2011年の所得が非課税かどうか判明します。従って市役所が2011年の非課税証明書が発行出来るようになるのは、2012年6月からとなります。これ以前に2011年の非課税証明書を入手することは困難です。なお、非課税証明書が取れるのは6月1日とは限らない、年度によって多少変化します。6月1日が平日であっても、です。

診断書入手、自己判断欠勤
 傷病手当金の受給自体には診断書は不要(傷病手当金申請書(請求書)のみで可)ですが、そもそも、会社を休職するに診断書が必要でしょう。しかし、精神疾患の初診で診断書を書いてくれる所は少ないです。精神疾患は詐病が多いので仕方ないかもしれません。
 なお、「傷病手当金申請書(請求書)」の「医師の意見書」欄に記入された労務不能開始日以降からしか傷病手当金は受給出来ず、それ以前の欠勤期間に関しての請求は難しいです。特に、「医師の診察を受けずに自己判断で欠勤していた場合」は、保険者もレセプト(診療報酬明細書)等で医師の受診が確認が出来ないので、請求したとしてもその間の分は不支給の可能性が高いです。
 但し、「体調不良で色々な医療機関を受診したが病名不詳で、傷病による労務不能の意見が貰えなかった場合」は、保険者はレセプト等で医師の診察を確認出来るので、保険者は支給・不支給を総合的に判断するので、その間の分も支給される可能性があります。この場合は、色々な医療機関を受診した事実(医療機関名・診察年月日・診断内容等)を申立書に書き、傷病手当金申請書(請求書)に添付して下さい。

受給中、健康保険の被扶養者の地位
 もしあなたに家族がいて、家族の方々が健康保険の被扶養者になっていても、傷病手当金の受給によりその地位が影響を受ける事はありません。なぜなら、退職するまでは、会社に籍がある以上、休職中であろうと毎月、健康保険料の被保険者負担分を支払う義務があるからです。

再度の傷病手当金(社会的治癒)
 以前に同じ病名で傷病手当金を受けたことがある場合、前回の傷病手当金の支給開始日より1年6か月以内であれば、今回は、前回支給開始日より最長1年6か月までの範囲内で受給可能です。前回支給開始日より1年6か月を超えていれば、前回の傷病が完治(社会的治癒を含む)し、再発したと保険者が判断しない限り、受給出来ません。
 社会的治癒とは、同じ病気であって一定期間薬を飲んでいないとか、病院に通院していない場合に病気が治癒したものと扱うことです。3年〜5年(健保ごとの判断。保険者(健康保険組合等)の裁量により判断)が目途です。
 なお、同じ病名(同一傷病)とは、精神疾患を指し、病名が異なっていても精神疾患であれば、同一の傷病と見做されます。
*今の健保組合が本人の同意を得て、以前の健保組合に傷病手当金の受給歴を照会する場合や今の健保組合が本人に過去の傷病手当金受給歴を問い合わせてくる場合等があります。
*同姓同名の人がいても、生年月日まで同じ人はいないと思いますので、誤照会の可能性はないと思います。仮に同姓同名の人がいても、過去に傷病手当金の受給歴がない場合は、再調査を依頼すれば、別の人物の履歴であることが判明するでしょう。
*過去に同じ病名で傷病手当金を受給したことがあり、今回はもらえないことを知っているにも関わらず受け取るのは違法です。あとで、もらえないことが判明すれば、返還はもちろん、悪質と判断されれば、詐欺罪で訴えられる可能性もあります。
*厚生労働省の通達では、「社会的治癒とは、医療を行う必要がなくなり、社会的に復帰している状態をいう。薬治下又は療養所内にいるときは、一般社会における労働に従事している場合でも社会的治癒とは認められない」となっています。ですので、社会的治癒とみなす条件として、以下のことが挙げられます。
・症状が安定している。そのため通院、投薬の必要がないこと。
・ある一定期間(傷病により異なる)通常業務に支障がないこと。
・医師の診察でも異常が認められず、自覚症状もないこと。
◆通院も経過観察や予防のためであれば、医療を受けていることには該当しません。(治療行為とは認められない、予防のための最低限の投薬は、許容範囲内と考えます)
*障害年金の場合の社会的治癒は条件が異なります。詳しくは「障害年金・障害手当金・特別障害給付金(用語集のオマケ付)」の用語集「社会的治癒」を参照。

傷病手当金の受給期間をズラしたい
 人によっては、次のような状況もあるかと思います。
 「現在休職中ですが、給与が減額されて支給されています。職場の担当者から、傷病手当金の申請書が送られてきましたが、現在並行して給与が支給されているため、傷病手当金はほんのちょっとの差額の調整くらいしかもらえなさそうです。現状、職場復帰は難しそうなので、退職を念頭においています。そこで、できれば退職直前に傷病手当金の支給申請をして、退職後最大1年半、手当金が受け取れる状態にしておきたいということですが、そんなことは可能なのでしょうか? つまり、傷病手当金は欠勤4日目から支給されるとのことですが、申請のタイミングによって支給期間をズラすことはできますか? それとも、申請の時期に関係なく、1年半の期間は連続した欠勤の4日目からカウントされるのでしょうか?」
「『年次有給休暇を後倒しにすること』はできるのでしょうか? 将来復職したときのために年次有給休暇は温存しておきたい。だから、年休消化前に傷病手当金を受給したい。それとも、あくまでも、年休を使い切った上でないと、欠勤や休職というのは認められないのでしょうか?」

 上段は、これは、可能です。在職中に連続する3日間プラス1日以上の労務不能期間(医師の意見が必要)をとり、退職後の傷病手当金の受給要件を満たすように退職すれば、退職後も在職中から引き続き傷病手当金を受給することが可能です。
 下段も、年次有給休暇を後倒しにすることは可能です。年次有給休暇をいつ消化するかは、労働者の都合で決められます。(但し、使用者の時季変更権があります)。また、企業によって、会社のルール(慣習)として年次有給休暇を全て消化してからしか休職を認めないという会社もあります。
*また、有給にするか欠勤にするかは、労働者が決めることになっていますが、企業の慣習上、先に有給休暇を取得するということなら、それに従うことが無難です。
*休職期間中に傷病手当金より多い金額が支給される場合は、通常、傷病手当金を請求しません。病気が長引き、無給又は一部支給となった時点で傷病手当金を請求します。休職期間中は、一般の企業の場合、無給であるのが普通です。その場合は、傷病手当金を請求します。私傷病による休職で、通常の給与を支給している企業は、一部の大企業か、一部の官公庁位でしょう。これは、社員の福利厚生を充実し、優秀な人材の確保を目的としています。
*参考までに、傷病手当金は支給開始日から最長1年6か月支給されます。例えば「休職から半年は会社から休職手当が出て、その額を傷病手当金を上回る場合」は、休職手当支給が終了した日の翌日が支給開始日となりますので、そこから最長1年6か月支給されます。会社からの給料が傷病手当金の額を上回り傷病手当金の受給額が0円だった場合は、傷病手当金を受給しているとして年月がカウントされることはありません。

傷病手当金と失業手当。再就職。
 退職後の傷病手当金と失業手当とは、同時に受給できませんが、時期をずらして(※1)受給する事は可能です。退職後は傷病手当金の受給を優先し、退職日の翌日から30日経過後1ヶ月以内(※2)に住所地を管轄するハローワーク(公共職業安定所)(※3)で、受給期間延長申請を行います。傷病手当金受給が満了するか、傷病が完治すれば、医師から「就労可能証明書」を取得し、受給期間延長申請を解除し、求職の申込と失業手当受給申請手続きをとります。
 なお、再就職した場合、再就職先の会社から前の会社の源泉徴収票の提出を求められます。そこで、収入(課税所得)が少なければ、長期欠勤ないし休職していたことは発覚するでしょう。傷病手当金を受給していたかどうかは本人が言うまで分からないと思います。
 「確定申告は自分でやるから、会社で年末調整をやってくれないでいい」とか言って、源泉徴収票の提出を拒めば、源泉徴収票の提出を拒む正当な理由がないと、会社は不審に思うでしょう。
 また、住民税を給与から天引きする(これを特別徴収と言います)と税額が低いので、ばれるでしょう。給与からの天引きではなく自分で納付する(これを普通徴収と言います)ことにすれば、ばれないかもしれませんが、この場合もなぜ給与からの天引きにしないのか不審に思われます。
 住民税が自分で納付するタイプの会社なら、ばれない可能性は高いと思いますが、入社時に源泉徴収票の提出が義務付けられている(給与水準を確認するために提出させる)とばれる可能性は高いでしょう。

※1
医師に就労可能証明書を書いてもらい、住所地を管轄するハローワークに離職票その他必要書類とともに提出し、求職の登録をし、失業手当受給の申請をすれば、待期期間(7日間)経過後、求職活動をしても再就職が決定しない日に対し、所定給付日数の範囲内で失業手当が支給されます。つまり、失業給付を受けることが出来る日は、待期期間経過後の日からとなります。
※2
受給期間延長申請の具体的な期間は、次のとおりです。例えば、3月4日に退職すると退職日の翌日から30日経過した日は、4月4日となります。この場合の受給期間延長申請が出来る期間は、4月4日から5月3日までとなります。退職日の翌日から30日の期間を空けているのは、病気の場合、30日以上病気による労務不能を確認した後、病気のため、受給期間の延長申請を認めようとする考えからきています。
※3
求職活動をするためなら、職場に近いハローワークでも、最寄りのハローワークでも構いませんが、失業手当の給付申請は、「住所地を管轄するハローワーク」ですることと決まっています。

 失業手当について、精神障害者保健福祉手帳を取得(申請中でも可。等級は不問)すれば、就労困難者と判断され、所定給付日数が以下のように延長します。
※手帳申請中の場合の所定給付日数は、手帳がないものとした場合の所定給付日数が仮に決定され、手帳を取得することができれば、所定給付日数を増加させてもらいます。手帳が取得出来なかった場合は、仮の決定が本決定(所定給付日数の増加なし)となります。
*失業手当の所定給付日数が決定された段階で手帳が有効期限内であれば、その後有効期限が切れた日に調査されることはありません。
*手帳があっても、「失業給付の3ヶ月の『給付制限期間』の免除」はありません。逆に、手帳がない場合でも「病気」を理由とする退職であれば、「特定理由離職者」に該当し、給付制限期間の3か月は課されません。
*「1年働いてやめる→300日失業保険→また1年働いて→300日失業保険」も、理論的には可能です。
就職困難な者(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、のいずれか所持者)(枠内文字中央揃え)
離職した日の年齢/被保険者であった期間
1年未満
1年以上
45歳未満
150日
300日
45歳以上65歳未満
360日

文字中央
揃え
傷病手当金
失業給付
根拠法
健康保険法
雇用保険法
受給条件
健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あり、退職時に傷病手当金の受給要件を満たしていること
退職日以前2年間に被保険者期間(賃金支払基礎日数が11日以上ある月)が通算して12ヶ月以上あること
退職時の労働能力
退職前より引き続き傷病のため労務不能の状態にあること
労働可能な状態にあること
支給額計算方法
標準報酬日額(=標準報酬月額÷30)を基に計算
賃金日額
(実際の支給額(税金や社会保険料等が控除される前の金額))
支給期間
支給開始後最長547日
被保険者であった期間
10年未満→90日
10念以上20年未満→120日
20年以上→150日
第1回目の支給時期
申請日から約6〜8週間後
自己都合退職→申請日から約4ヵ月後
その他→申請日から約1ヵ月後
申請書提出先
退職した会社を管轄する全国健康保険協会都道府県支部または健康保険組合
住居地を管轄するハローワーク(公共職業安定所)

*失業給付については、詳しくは雇用保険(失業給付)・傷病手当のページを参照。




延長傷病手当付加金


前の画面へ戻る

玄関へ